選択的夫婦別姓とヘイト


自民党が、夫婦別姓に反対する表向きの理由は、「子供がかわいそうだから」というものです。

もちろん、それは表向きで、本音は戦前の家族制度を懐かしがっているアナクロニズムだということは、杉田水脈議員の言動を聴いているとよく分かります。

むしろ、大人が「かわいそう」などと言えば、それを聴いた子供たちに差別意識が生まれかねません。それは、差別を助長するのです。




1 「かわいそう」って「上から目線」でしょ

執筆日時:

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筆者:平児

子供のころから「かわいそう」って言われるのが嫌だった。ついでに言えば、大人から「偉いね」って言われるのも嫌だった。

だから、平児は、自分の子にも他人の子にも、絶対に「かわいそう」とか「偉いね」とか言わない。「かわいそう」という言葉は、言ってる本人が自分の感情に酔っているだけだ。言われている子供がどれだけ傷ついているか分かっていない。その言葉は、自分より相手を低く見ているから出てくる。「哀れな奴」というのと同じ意味だ。

ついでに言えば、子供をほめるときは「偉いね」じゃなく「すごいね」と言う。「偉いね」は上から目線だが、「すごいね」は対等な立場からの言葉だから。


2 「夫婦別姓は子がかわいそう」は空中楼閣


(1)同性のカップルに育てられた青年

自民党が、夫婦別姓に反対する表向きの理由は、「子供がかわいそうだから」というもの。もちろん、それは表向きで、本音は戦前の家族制度を懐かしがっているアナクロニズムだということは、杉田水脈議員の言動を聴いているとよく分かる。

そもそも、「夫婦別姓の子供がかわいそう」だというなら、なぜ、自民党は同性婚を認めようとしないのか。同性カップルで子供を育てているケースは多い。その子供たちのことをどう思っているのかと言いたい。

ここで、動画を一つ紹介したい。レズビアンのカップルに育てられた青年のスピーチだ。

この青年は、とても優れた人物だと平児は思う。「かわいそう」なんて思う人がいたら、大変に失礼なことだ。


(2)別姓を選んだ親の子供たち

また、朝日新聞DIGITALの記事「 『夫婦別姓は子がかわいそう』と言う人へ 子どもの声は」に、親が別姓である9~22歳の5人の子供(親からみて子供という意味)の意見が紹介されている。彼らの親は夫婦別姓を選ぶために法律上の結婚をしないという方法を選んでいる。

この子供たちは、全員が堂々と顔を出して意見を言っている。この子供たちの意見を紹介しよう。

  • 「かわいそう」かどうかは経験しないとわからないこと。そう言っている人はたぶん同姓の人たちの子どもだと思うんですけど、根拠がないので納得できないです。
  • 子どもがかわいそうと言っているのを聞いて、自分がそう思ったことはないけど、「もしかわいそうと思うなら早く選択的夫婦別姓制度を導入して」と思います。
  • かわいそうじゃないのにかわいそうと言われることがかわいそうだと僕は思います。
  • 姓を変えたくない人はそのままにすればいいし、変えたい人は変えるというそれだけの話なので、なんで反対するのか、逆に聞きたいです。
  • 親の名字が違うからいじめられるとかいうのは、自分の経験上、妥当性が低いと思います。その意見を言う前に、一人でも多くの当事者の経験談に耳を傾ける努力をしたのか、疑問です。
  • たぶんみなさん、自分のことをかわいそうと思ったことはないと思うんですけど。自分と違う家庭への想像力が足りないと思います。

※ 朝日新聞DIGIITAL「 『夫婦別姓は子がかわいそう』と言う人へ 子どもの声は」より。引用者において箇条書きにした。

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どの意見も素晴らしいと思う。自分をかわいそうだなんて思わないけれど、そう思うなら選択的夫婦別姓を実現して欲しいと言っている。
これを聴いて、自民党の国会議員の先生方はどのように答えられるのだろうか?


3 「かわいそう」は差別意識の表れだ

夫婦別姓の子供が「かわいそう」という意識は、夫婦別姓の子供や、同性カップル養子、シングルマザーの子供などを結婚した異性カップルに育てられた子供より「低い」子供という思想の表れであろう。

大人が「かわいそう」などと言えば、それを聴いた子供たちには差別意識が生まれかねないのである。それは、差別を助長するのだ。

そもそも、選択式夫婦別姓に反対するのは、自分たちの特殊な思想を、国民の幸福よりも重要視する思想であろう。

そうでないと言うなら、朝日新聞の記事で子供の一人が述べたように、姓を変えたくない人はそのままにすればいいし、変えたい人は変えるというそれだけの話なので、なんで反対するのか、逆に聞きたいと平児も思う。

選択的夫婦別姓制度に反対する自民党が、「かわいそう」などというのは、自分たちで原因を作っておきながら盗人猛々しいとしか言いようがない。