眞子内親王への誹謗中傷


眞子内親王の婚約発表の直後から、一部マスコミとネット右翼界隈から、誹謗中傷が起きて人権侵害の様相を帯びています。

天皇制を支持するか否かにかかわりなく、皇族個人への人権侵害的な誹謗中傷は許されるものではありません。

今回の皇族に対する誹謗中傷は、主に天皇制を支持する人々の一部によって行われており、むしろ天皇制に批判的な人々が眞子内親王を擁護していることに特徴があります。

今回の事件は、天皇制の骨幹が非人間的なものがあることを明らかにするとともに、天皇制を支持している人々の一部の「幼児性」をも明らかにしました。

天皇制が、日本が真に近代的な国家を樹立するうえで有害なものであることを論じています。




1 眞子内親王への誹謗中傷の骨幹にあるのは「幼児性」である

執筆:

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筆者:平児

2017年9月3日に眞子内親王が婚約を公表(※1)した数か月後の2017年12月に、「週刊女性誌」(※2)がいわゆる「金銭トラブル問題」を報じた。これがきっかけとなって、この結婚に対して「反対」の意見表明や、批判が巻き起こったことは良く知られている。

※1 宮内庁2017年09月03日「眞子内親王殿下と小室圭氏のご婚約内定についての記者会見

※2 週刊女性2017年12月26日号「秋篠宮家はご存知か! 眞子さまの婚約者・小室圭さん母「400万円」借金トラブル

一部の右翼の論者の間では、国民が反対してるにもかかわらずこれを無視して結婚をするのはごり押し(※1)だの、国民の声を無視して婚姻を「強行」するのは強引だ(※2)のといった、国民には皇族の結婚を決める権利があるという暴論を前提とした眞子内親王への批判が沸き起こっている。

※1 岩田太郎「眞子さまの「ゴリ押し婚」が違憲かもしれないこれだけの理由」(JB press2021年09月25日)など

※2 週刊女性2021年06月08日号「小室圭さん6月帰国へ「もう待てない」国民の声が届かぬ眞子さまが“結納”強行か」など

しかし、そもそも眞子内親王は皇族とはいえ女子であるから、法律的にも当事者の意志のみで結婚できる(※)。また、婚姻によって皇族を離れることになるので、結婚は国事行為でもなければ政治的な問題にもなりようがない。他人が賛成とか反対とか述べることには法的に何の意味もないのである。

※ 皇室典範第10条は「立后及び皇族男子の婚姻は、皇室会議の議を経ることを要する」としているが、眞子内親王は女子であるから、皇室会議の議を経ることを要しない。したがって、憲法第24条の原則による。

これらの考え方の背景にあるのは、一言でいえば「幼児性」であり、もうひとつは「天皇制が内包する非人間性」であろう。婚姻を当事者が自由に決められず、他人の意思に任せるべきとすれば、それが非人間性であることは明らかである。また、幼児性があるというのは次の2つの理由からである。

【眞子内親王への批判がなぜ幼児性によるものなのか】

  • 眞子内親王の結婚への反対は、自分たちが反対しているのだから眞子内親王の結婚はするべきではないというものである。しかし、これは眞子内親王が自立した人格であることを無視している。自分が反対だから他人(眞子内親王)はそうするべきだというのは、子供が駄々をこねているのと変わりはない。
  • 眞子内親王の婚約者は、法的な問題を起こしてはいない。批判の内容は「元皇族との婚姻生活に必要な資力がない」など、庶民だというだけのことなのである。また、その母親に対する批判も、「金銭トラブル」については一方の当事者の主張のみに基づいており、他の「疑惑」についても(刑事告発されたが返戻された。)報道の根拠となっているものは伝聞や憶測に基づくもので確たる証拠に基づくものではない。自分に都合の良いものなら、証拠のないものでも都合よく信じてしまうというのは自立した大人の態度ではない。

2 眞子内親王とその婚約者への批判には理由がない

(1)眞子内親王の婚約者にはなんの落ち度もない

ア そもそも他人の婚姻について批判することが不当

眞子内親王の婚約者への批判は、未来の天皇の女婿あるいは義伯父としてふさわしくないというものにすぎない。しかし、そもそも眞子内親王は愛する人との結婚を願っているのであって、天皇の姻戚を確保するために結婚をするわけではない。誰が婚姻の当事者として相応しいかは当人が考えることである。いいがかりとしかいいようがない。

イ いわゆる「金銭トラブル」について

いわゆる「金銭トラブル」は、眞子内親王の婚約者のご母堂とその元婚約者との間の過去の金銭の授与についてのことである。眞子内親王の婚約者本人の問題ではない。しかも、民事上の争いがあるということは、お互いに言い分があるということである。裁判も行われていない以上、どちらが悪いと一方的に決められるものではないのである。

眞子内親王の婚約者側が公表した文書(※)によれば、相手側(ご母堂の元婚約者側)は消費貸借であったと主張し、眞子内親王の婚約者側は贈与と主張している。眞子内親王の婚約者によれば、相手側はかつてこれを贈与であると明言し、婚約を解消するときに返還の必要はないとしたという。それにもかかわらず、眞子内親王の婚約が公表されると、貸した金を返してもらえないとマスコミに告げたということになる。

※ NHK2021年04月08日「【全文】小室圭さん金銭問題の説明文書公表」など。

マスコミによる眞子内親王の婚約者への批判は、一方当事者の主張の立場からの批判であり、公平なものとはいいがたいのである。

ウ 能力と収入についての奇妙な批判

また、収入が低いことや国内で司法試験に合格しなかったことを云々する報道もある。確かに、ニューヨーク市の弁護士として1800万円の収入(※)というのは、決して多額とは言えないが、普通の生活をしていくのには不自由はしないレベルである。

※ 東スポWEB 2021年09月26日「小室圭さん 平均1800万円を上回る驚愕年収が判明! 眞子さまは主婦専念か」などによる。

元皇族として必要な警備の費用が足りないという指摘もあるようだが、そもそも警備が必要なのは眞子内親王が皇族であったからである。一時金を辞退せざるを得ない状況に追い込んだマスコミがそれを主張するのは、理屈が通らない。

結婚の相手に何を求めるのかは、それぞれの個人が考えることであって、他人があれこれ言うべきことではない。

エ その他

最近では、髪型にまで批判があるが、多様性を重視することの大切さが言われている中で、このような批判は意味がないものと言わざるを得ない。

また、結婚の発表のための2021年の一時帰国について、警備費が多額だ(※)などという批判もあるようだが、皇族の婚約者ともなれば警察当局としても警備はせざるをえまい。警備が厳重にならざるを得ないのは、報道によるバッシングが原因ともいえるのである。

※ NEWSポストセブン2021年09月30日「小室圭さん、自宅で隔離生活 突然の変更に警察関係者「本当にうんざり」」によれば、眞子内親王の婚約者が帰国後の一時隔離場所をホテルから一方的に自宅に変更したとして批判されている。ところが、デイリー新潮2021年10月07日「小室圭さん、帰国後の滞在先は「帝国ホテル」をゴリ押し 仮住まい候補は家賃80万円超」によれば、婚約者がホテルへの隔離を要求したとして非難されている。デイリー新潮は、ご丁寧に「警察庁や警視庁の幹部から相次ぎ、急遽、滞在場所は自宅に変更された」としている。

これも一例に過ぎないが、一方的な伝聞と憶測によって、さしたる根拠もなく、フェイク報道をしているとしか言いようがないのである。

まして、米国からの帰国便にエコノミーを用いる(警備の都合で航空会社側がビジネスに変更した)眞子内親王の婚約者が高級ホテルに宿泊を望むわけがないのである。ホテルに滞在した場合に、その費用は税金によるなどと匂わせる報道も一部にあるようだが、こんなものを税金から支出できるわけがないだろう。

警備の都合から、政府の側が婚約者の自費によるホテル滞在を勝手に決めて準備をしていたところ、事前にそれを知らされていなかった婚約者の側が生活資金の節約のために断ったというのが、もっともありそうなことであろう。

いずれにせよ警備費は、眞子内親王の婚約者個人の責任ではなく、批判には理由がないというべきである。


(2)婚約者の母親に対する批判は、眞子内親王の婚約者とは関係のないことである

ア いわゆる金銭疑惑は法的には問題にするようなことではない

眞子内親王の婚約者のご母堂に対する批判の第一はいわゆる「金銭トラブル」であるが、婚約した男女の間で金銭のやり取りが法的な意味が不明確なまま行われ、関係が悪化した後に返還請求がされてトラブルになることは一般論としてはよくあることである。

今回の事件では、ご母堂の側は贈与契約であったと主張した上で、解決金の支払いを提案しているのであるから、法律的には批判されるようなことは何もないといってよい。報道機関による批判は、あまりにも一方的なものである。

報道によれば、眞子内親王の婚約者が相手側に会おうとしても、相手側は御母堂でなければ会わないとしてこれを拒否しているという。御母堂にしてみれば、マスコミに様々な情報を漏らす相手側に会うことには恐怖感を覚えるであろう。

※ 東スポWeb 2021年10月08日「小室佳代さんに「会わせて」繰り返す元婚約者に違和感「通用しない」 山下晋司氏指摘」。

眞子内親王の婚約者は日本の弁護士の資格はないにしても法律家なのであるから相手側と交渉しようとすることは自然なことである。御母堂から報酬を受けなければ弁護士法違反にもならない。これを拒否している相手側に解決の意思がないと考えるのが自然ではある。

イ その他の疑惑も「疑惑」に過ぎないのである

また、いわゆる「傷病手当金疑惑」(※1)、「労災保険疑惑」(※2)については、それを報じた記事は伝聞と憶測のみを根拠にしたもので、とうてい信用できるようなものではない。場合によっては、名誉棄損罪になりかねないような記事である。

※1 デイリー新潮2021年08月20日「小室佳代さんに「傷病手当」不正受給疑惑が 療養期間中に軽井沢でアルバイト」など。なお、この記事の表題中の「傷病手当」は「傷病手当金」の誤り。この両者は、法律用語としては別な概念である。

※2 NEWSポストセブン2021年09月10日「小室佳代さんが労災トラブル 勤務先は「バカバカしくてやってられない」」など。

その他には、年金疑惑(※)が報じられている。これについては、メールのコピーがあり、さすがに報道機関がメールを偽造したとは思えないが、これらが報じられた時点では司法捜査や行政調査が行われているわけでもない。たんなる疑惑に過ぎないのである。

※ 週刊文春2021年04月29日「小室佳代さんが送っていた遺族年金“詐取計画”メール 口止めも…」など。

この2件の「疑惑」についてあるジャーナリストが、刑事告発を行ったという報道がなされている(※1)。刑事告発は誰でもでき、一応の形式が整っていれば受理されることになる。ところが報道(※2)によると告発状は返戻され、通知文には「犯罪構成要件に関する具体的事実が記載されておらず、具体的な証拠に基づいた記載もなく、告発事実が十分に特定されているとはいえません」とされていたという。

※1 NEWSポストセブン 2021年10月08日「小室佳代さん「詐欺罪」で刑事告発 2つの不正受給疑惑は最終局面へ」。

※2 東スポweb 2021年10月12日「小室圭さん母・佳代さんへの刑事告発が不受理ではなく返戻 告発した篠原氏は継続宣言」。

要するに、「疑惑」とされている「事件」は、刑事事件になるようなものでさえないということである。たんなる誹謗中傷に過ぎないと公的に認められたわけである。

もちろん仮に「疑惑」が事実とすれば批判されるべきことではあるが、通常であれば行政的に返金の指示がなされて終了となるケースである。詐欺罪で司法捜査が行われるような事件ではない。皇族と庶民が結婚するなら、徹底的に不幸に陥れてやるという底意を感じてしまうのは私だけだろうか。

ウ 生活態度については批判の対象となるようなものではない

さらには御母堂が髪を染めたことや服装についても批判があるが、このような批判は、たんなる誹謗中傷、いいがかりに過ぎない。誰でも、髪型や服装を自分で決める権利があるのだ。まして、ご母堂は民間人に過ぎないのである。余計なお世話というべきだろう。

一部の報道機関は、御母堂の日常生活時の写真を盗撮するというストーカー的な行為を行い、写りの悪い写真を公表したりしている。このような行為は、迷惑行為防止条例に抵触しかねない行為であり、嫌悪感をもたらす。

エ 親のことで子供が結婚の対象として相応しくないというのは人権侵害である

そして何よりも、親の問題は子供とは何の関係もないことなのである。親の問題で、子供が結婚差別されるとすれば、それは人権問題であり、さらには非人道的な行為というべきであろう。

皇族については、親が報道機関に批判されている相手とは結婚してはならないということにはならないのである。


(3)眞子内親王は愛する人と結婚しようとしているだけ

眞子内親王についていえば、非難されていることは、「選んだお相手が皇室にふさわしくない」という一事にすぎない(※)

※ デイリー新潮2021年09月16日「眞子さまの「勘当婚」が悠仁さまのご結婚に与える影響 「女性宮家」「皇女」議論も後退か」など。

しかし、これは、批判する側がおかしいのであって、眞子内親王には批判されるような理由はない。繰り返すが、皇女といえど尊厳を持った個人であり、結婚の相手を皇室にふさわしいかどうか、国民の理解を得られるかどうかで選ばなければならないとする理由はないのだ。

いかなる理由によっても、眞子内親王は、その結婚相手に誰を選んだかで批判を受ける理由はないのである。


3 報道機関は、金になるなら人権侵害を厭わないのか

(1)心の健康問題になるまで追いつめて、さらに開き直り

2017年12月の「金銭トラブル」報道以降、一部の報道機関による眞子内親王とその婚約者とご母堂に対する誹謗中傷は、トラブルの一方当事者の主張に基づくものや、伝聞や憶測のみが根拠となっているものしかないと言ってよい。皇族が反論しないことを良いことに、誹謗中傷の嵐と言ってよい。

そして、報道機関の批判記事に煽られた一部の評論家やネット右翼が、SNSなどで一方的な批判を繰り返している。

このため眞子内親王は、一部報道機関の報道やネット右翼の批判によって精神的に追い込まれ、複雑性PTSDに罹患したと公表されている。まさに人権侵害というべきものである。

※ 時事通信 2021年10月01日「眞子さま26日結婚、会見 「複雑性PTSD」と診断―宮内庁」。

ところが、この公表にまで批判が起きているのである。右翼の報道機関は、「国民の声(実際には一部報道機関と右翼の声なのだが)を誹謗中傷というのか」と、病気に追い込んだ相手に対して攻撃しているのである。もはや醜悪としか言いようがない。

※ デイリー新潮 2021年10月06日「国民の声を“誹謗中傷”呼ばわりで炎上 眞子さまのご希望通りだった「複雑性PTSD」発表」。


(2)一時金を辞退してもさらに追い込もうとする

宮内庁の公表によれば、眞子内親王は誹謗中傷が続くことをおそれるあまり、一時金の受け取りを辞退したとされる。一時金は1億数千万円といわれるのであるから、いわゆる金銭疑惑の金額よりもかなり多いのである。

ところが、眞子内親王が精神的に追い込まれて心の健康問題を起こしたと公表された直後に、「一時金を辞退しても、“一時金並み”の巨額持参金を手にできる」「必要に応じてご一家が秘密裏に持参金を渡される可能性は充分にあります。元はと言えば税金です」などと、さらに追い込むような報道が行われている。これなど、ネット右翼を煽っていると言われても反論できないのではなかろうか。

※ NEWSポストセブン2021年10月03日「眞子さま 約1.4億円の一時金拒否でも“一時金並み”の巨額持参金の可能性」。

なお、かなり前になるが、結婚後はどうせ秋篠宮家が結婚後に支援をするのだろうという憶測報道も見られた。これは秋篠宮家の皇族に支給される内廷費又は皇族費から支援が行われるという「憶測」であるが、皇族がこれらの資金を自由に使えるのは皇室経済法第2条及び皇室経済法施行法第9条の規定により限られた場合のみでありそんなことはあり得ない。

※ NEWSポストセブン2020年12月11日「眞子さまと小室さん 結婚したら半永久的に皇室のお金流入も」。


(3)様々な憶測と解釈を根拠に好き放題な批判

眞子内親王の結婚は通常なら行われる儀式もなく、天皇や上皇へのあいさつは眞子内親王が一人で行うとされている。

公金を結婚の儀式に用いることで、誹謗中傷が起きることを恐れての措置である(※)。ところが、こんなことにも憶測記事での誹謗中傷が行われている。

※ 時事通信 2021年10月01日「儀式・一時金なしは戦後初 眞子さま、国民感情に配慮」。

それらの批判記事を詳細にみてみると、儀式が行われない理由について様々な矛盾する状況が描かれている。眞子内親王が儀式を拒否しているとするもの(※1)があるかと思えば、宮内庁の側が「皇室は眞子内親王殿下の結婚を認めた」という「誤解」を国民に与えることを恐れたというもの(※2)など、伝聞と憶測に基づく報道が行われている。とうてい信じられるような内容ではないのである。

※1 NEWSポストセブン 2011年10月03日「結婚関連儀式を行わない眞子さま 小室圭さんは両陛下と一生会わない事態も」。

※2 週刊女性PRIME 2011年10月19日「眞子さま、結婚発表のウラにあった「NY“極秘”就職先」と「秋篠宮さまへの懇願」」。


(4)ついに黒幕説まで登場。マスコミのレベルはどこまで落ちてゆくのか

眞子内親王の婚約者も、国からの支援を受ければ誹謗中傷が止まらないと恐れているのであろう。国からの支援はできるだけ避けるという方針のようだ。

すると、今度はNEWSポストセブンが、「宮内庁のサポートがなくても大丈夫なのは、ほかに頼れる “あて” があるからだとみる関係者は多い」と言い出して、黒幕説を唱え始めたのである。

※ NEWSポストセブン 2021年10月07日「小室圭さん 宮内庁の海外生活支援申し出に「放っておいて下さい」の態度か」。

もちろん、根拠は何一つ示されていない。ここまでくると「陰謀諭」の様相を帯びてくる。ほとんど根拠のない憶測で記事を書いているのである。SNSのネット右翼ではあるまいし、これでも報道機関という名に値するのだろうか?


4 眞子内親王への誹謗中傷に見る不都合な事実

(1)フェイクと誹謗中傷が世論に一定の影響を与える

ア 誹謗中傷で信頼できる証拠に基づくものは皆無

眞子内親王の結婚について、大手の報道機関は落ち着いた報道をしているし、誹謗中傷に反論している報道機関もあり、実は、誹謗中傷を流しているのはごく少数の報道機関だけである。

眞子内親王への誹謗中傷の構造は、ごく一部の報道機関が憶測と伝聞に基づいて様々な誹謗中傷を行い、これに(国民の1%にも満たないとされる)ネット右翼が飛びついて真実であるかのようにSNSに書き散らして炎上させているというものである。

しかし誹謗中傷の内容をよく読めば、名前さえ明らかにしない者からの伝聞を根拠にしていたり、たんなる憶測だったりで、客観的な証拠に基づくものや合理的な内容は皆無と言ってよい。

イ 世論調査に見る報道の影響

読売新聞が2021年10月に行った世論調査では、結婚についてよかったかと思うかという問いに対して「『思う』との回答は53%と半数を超え、『思わない』は33%だった(※1)、毎日新聞の同年9月18日の調査では「『祝福したい』との回答は38%で、『祝福できない』の35%をわずかに上回った(※1)などとされている。

※ 読売新聞 2021年10月05日「眞子さま結婚、よかったと「思う」53%…読売調査

※ 毎日新聞 2021年09月18日「眞子さまのご結婚 「祝福したい」38% 否定回答と拮抗 世論調査

もちろん、「思わない」や「祝福できない」という回答の中には、そもそも天皇制に無関心・反対という人もいるだろうから、これらの回答をした人が、すべて一部マスコミの誹謗中傷の影響を受けているわけではないだろう。

しかし、過去の皇室の結婚における国民のフィーバーぶりから判断する限り、今回の「反対」世論の多さは一部マスコミの影響を受けているとしか考えられないのである。

ウ 皇族と結婚しようとした一般市民がバッシングを受けるおそろしさ

眞子内親王の婚約者とその御母堂がどのような人なのかは私には分からない。だが、報道されている内容からは、批判されてもやむを得ないような人物であるという明確な証拠は見いだせない。

また、(再び告発を受けて今後、捜査される可能性のある)御母堂の「疑惑」が仮に事実だとしても、それは批判されるべき行為ではあるが、行政から返還の指示が行われることもなくいきなり司法捜査が入るような事件ではないのである。このような「疑惑」について、いきなりジャーナリストが告発をするということには、違和感を感じざるを得ない。

ところが、このような誹謗中傷が一定の国民世論を形成してしまい、一人の人間を精神的に追いつめて、心の健康問題まで発症してしまうのである。ことについて、私は日本社会の一部に恐ろしさを感じるのである。

さらには、一部報道機関とごく少数のネット右翼の誹謗中傷が、一定の世論を形成してしまうということについても、恐ろしさを感じてしまうのは私だけであろうか。


(2)幼児性のある議論が国民の支持を得ている

ア 眞子内親王の結婚は他人が口を出すようなことではない

繰り返すが、眞子内親王の結婚は、すぐれて個人的な問題であることは明らかだろう。皇族の女子は結婚すれば民間人になるのであり、また婚姻に税金が使われるからと言って、他人が賛成とか反対とか言えるようなものではないのである。

婚姻費用の原資が税金だと言い出せば、公務員の賃金や生活保護の給付金も原資は税金であるが、誰も公務員や生活保護世帯の子弟の婚姻に他人が口を出してよいとは思わないだろう。

眞子内親王の婚姻もそれと同じなのである。制度の是非はおくが、眞子内親王が辞退した一時金にしても、これまで支給されてきた資金にしても、眞子内親王が皇族であったことに対する支給であって、法律上に根拠のあるものなのだ。つまり、現行法令を前提とすればそれを受けることは権利なのである。

イ 自分が気にくわないものは誹謗中傷しても良いという意識が蔓延している

眞子内親王が、一部の報道機関やネット右翼から結婚に反対されている理由は、「相手が皇族にふさわしくない」「自分は一般庶民を皇族として敬いたくない」というにすぎない(※)

※ 一例を挙げれば、NEWSポストセブン 2021年10月08日「上昇志向のあり方が「令和」な小室圭さん 皇室に変化をもたらすのか」がある。とにかく、眞子内親王の婚約者の行動が気に入らないとケチをつけている記事なのだが、気に入らないといっているだけで内容が全くない。報道記事というに値しない。

だが、眞子内親王はひとりの人格を持った個人である。自分が気に入らないから他人の行動に反対するというのは、大人になっていない幼児の主張である。

民主主義の基本、法治主義の基本は、個の確立ということなのである。お互いに相手を個人として尊重することがその基本なのだ。

眞子内親王の結婚は、日本人の一部(右翼)に幼児性が根強く残っていることを示したものと言えよう。わが国の民主主義の発展の上からもきわめて憂慮するべき事態と言うべきであろう。


5 天皇制の廃止こそがわが国の民主主義への道

眞子内親王は皇族と生まれたがために、愛する人と結婚しようとして誹謗中傷を受けて心の病となってしまった。その結婚の相手の民間人も誹謗中傷を受けている。

佳子内親王も「どうせ好きな人とは結婚は出来ない」と漏らしたとされる。たしかに眞子内親王とその婚約者に対する誹謗中傷をみていれば、皇族と結婚したいと思う男性はほとんどいないだろう。

※ AERAdot.2021年09月25日「「どうせ好きな人とは結婚は出来ない」眞子さま結婚問題で佳子さまが漏らした悲痛な声〈dot.〉」。

皇族であるということに故に、人権を制限されて生きざるを得ない人々の存在は、天皇制の非人間性を如実に表している。そもそも、生まれながらに不平等な天皇制という制度は民主主義国家、近代的国家に似つかわしくはないのだ。

今回の誹謗中傷は、秋篠宮氏が「多くの人が納得できる状況にならないと納采の儀は行えない」と言ってみたり、実際の結婚に当たっても儀式を行わないなど、反対の態度をとっているようにみえることから、強まった面がある。秋篠宮氏が父親として実の娘を守るという態度を明確にしていれば、ここまで誹謗中傷が高まることはなかっただろう。

父親が、実娘の幸福よりも、国民の感情(と秋篠宮氏が考えたもの)を優先させなければならないというのも残酷な話である。

また、皇室という特殊な存在が、わが国の国民が幼児性から抜けきれない理由の一つになっているようにも思える。

右翼の一部からは、日本から天皇制が(皇族がではない)なくなれば、日本は自己中心的な人々の集まりになってしまうという声が聞かれる。まさに、皇室の存在があるが故に、国民は個人として独立できないということを、天皇制の支持者が自ら認めているのである。

天皇制などという非近代的、非人道的な制度をなくすことが、我が国の民主主義を正しく発展させていく上できわめて重要なものとなっている。


6 最後に

最後にこれだけは言っておきたい。

私は、天皇制には反対だが、個々の皇族に対して誹謗中傷をするようなことは間違っていると考えている。

眞子内親王には、おかしなマスコミのいない日本から離れたNYで、愛する人とお幸せになって欲しいと思う。

一部のマスコミとネット右翼が、この事件についてすぐに忘れてしまい関心を持たなくなることを祈りたい。