報道機関における差別事件


本来、報道機関とは差別をなくすための報道を行うものだと思います。ところが、昨今は、ニュース女子による沖縄差別などの確信犯的事件を別にしても、報道機関が差別を行っているとして炎上する事件が、あきれるほど多発しています。

このような差別事件が発生する背景には、差別意識の存在と、それを許容する組織内の雰囲気があるとしか思えません。一人一人が差別がなぜ許されないかを理解し、組織の中で差別を許さない雰囲気を醸成することが重要です。




1 繰り返される報道機関による差別事件

執筆日時:

最終修正:

筆者:平児

本来、報道機関とは差別をなくすための報道を行うものであろう。ところが、昨今は、その報道機関が差別を行っているとして炎上する事件が、あきれるほど多発している。

まさか、某ホテルや某化粧品メーカのように、確信的に差別をするようなことはあるまいと思っていたら、どうもそうではないのではないかと思えるような事件が引き続いて起きた。日本テレビのスッキリによる北方民族への差別放送と、報ステのジェンダー平等敵視CMである。

ただ、日本テレビは会長が謝罪し、報ステはCMを取り下げることとなった。某ホテルや某化粧品メーカのように、確信的に差別をしているというわけではないようだ。


2 今回発生した差別事件はなぜ起きた

スッキリの事件は、差別発言をした本人や、編集に当たった責任者らが、差別される側の痛み、苦しみが理解できていれば起きなかった事件であろう。あまりにも、直接的な差別発言なのだ。

一方、報ステの問題はどうだろうか。CMの中で、女優が次のような発言(演技)をしている。

「会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど、もうすっごいかわいくって。どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかって今、スローガン的に掲げてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」

最初聴いたときは、杉田議員の「男女平等は、反道徳の妄想」という国会発言と同じ思想を報ステも持っているのかと思った。報道機関として如何なものかと思っていたら、男女平等はすでに実現しているという前提で、それに反対しているのは「時代遅れ」と言いたかったらしい。

本当かなと言う気はするが、まあ、それはそうだとしておこう。だが、今の日本が男女平等が実現しているなどという認識だとしたら、これもまた報道機関としてあきれるばかりである。

「世界ジェンダー・ギャップ報告書(Global Gender Gap Report)2020」で日本は121位である。人権後進国として批判される中国でさえ106位、因みに安倍前総理のお嫌いな韓国は108位と日本より上なのである。

しかし、お詫びのツイッターは、「不快な思いをされた方がいらしたことを重く受け止め、お詫びするとともに、このWebCMは取り下げさせていただきます」という。どうやら、自分がしたことの意味が理解できておらず、「不注意」程度のことと思っているらしい。


3 不注意では済まされない

このような差別事件が発生する背景には、差別意識の存在と、それを許容する組織内の雰囲気があるからだろう。人であれば誰でも、意識しないまま差別の意識を持っているケースはあるだろう。要は、「学習」によって、それが許されないことだと「意識」し、かつ、組織の中で差別を許さない雰囲気を醸成できるかどうかである。

とりわけ、報道機関には、そのことが強く望まれるのだ。なぜ、差別が許されないか、それをきちんと理解できていれば、このようなことは起きないはずなのだ。
差別がなぜ許されないのか、次の動画はLGBTへの差別文書を著した杉田議員に対する講義活動のものだ。この動画で言われていることをよく聴いて欲しい。差別は人を殺すこともあるのだ。

また、今回の報道機関による事件は、生放送での社外の出演者によるハプニングではない。内部の者が行い、編集の家庭で見逃されているのである。組織として行われたものなのだ。


4 差別事件は企業にとってもリスクとなる

差別事件の発生は、企業存続にとってもリスクになるのである。このような事件をなくすために、社員に「テクニック」だけ教えようとする企業があるが、それでは根本的な解決にはならない。

差別をなくして、社員が働きやすい環境にするとともに、顧客から愛される企業になるためには、繰り返しになるが、一人一人が差別がなぜ許されないかを理解し、組織の中で差別を許さない雰囲気を醸成することである。

上司や先輩の差別を、部下や後輩が指摘できる雰囲気がなければ、また、上司や先輩がそれをうけいれることができなければ、事件は繰り返されることになるだろう。