「差別許さず」に反対?!


LGBT理解増進法原案に「差別は許されない」と書かれたことで自民党の反発が起きています。

自民党の山谷えり子議員は「性自認を理由とする差別は許されない」とされている点を問題視し、「このまま自民党として認めるにはやっぱり大きな議論が必要」と反対しています。

「差別は許されない」と書くことに反対する政党が政権を握っていることに恐怖を覚えます。




1 LGBT理解増進案に自民党が反対

執筆日時:

一部追記:

筆者:平児

LGBT理解増進法案(※)が超党派の議員によってまとめられた。法案には、自民、立憲、公明、共産、国民民主、維新、社民の各党の議員が法案に「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないものであるとの認識の下」と加えることなどで合意したものである。

※ 正式名称「性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律」。

ところが、自民党の山谷えり子議員は「法案の目的と基本理念で『性自認を理由とする差別は許されない』とされている点を問題視」し、「このまま自民党として認めるにはやっぱり大きな議論が必要」としたとされる(※)

※ 朝日新聞DIGITAL2021年5月20日「自民・山谷氏『ばかげたこと起きている』 性自認めぐり」による。

そして、自民党内部の議論で、「国会でさらに審議することを条件に了承」されたものの、これに異議が出されて混乱したという(※)。その理由は「差別は許されない」と書かれていることである。自民党の「性的指向・性自認に関する特命委員会」と「内閣第1部会」の合同会議において、「差別だと訴える訴訟が増えて社会が混乱する」などの反対意見が相次いだのだ。

※ 朝日新聞DIGITAL2021年5月20日「自民、LGBT法案の了承見送り 『差別許さず』に異論」による。

そして、最終的に、5月28日、自民党佐藤総務会長は法案の今国会への提出をしないと公表した。


2 LGBT理解増進案の意義

平児は、LGBT理解増進法案が完全なものとは思っていないし、差別禁止が理念としてしか記されていないことには不満を感じている(※)。しかし、自民党が国会で過半を掌握している現状では完全なものを望むことは困難である。その意味で、やむを得ないが一歩前進だとは考えている。

※ 2021年5月24日付東京新聞社説「LGBT法案 『差別禁止』は不可欠だ」は、「差別反対を掲げるが、自民党内の強い反対で行方は不透明だ。理念にとどまらず、実効性のある禁止規定を盛り込みたい」としている。

現に差別は存在している。東京新聞の社説は、「東京都の施設が『青少年の健全育成に悪影響がある』ことを理由に同性愛者団体の利用を拒んだ」事件や、「同性愛者らが集まる都内の公園で強盗事件が連続して発生し、死者も出た。実行犯の少年らは『同性愛者は(自らの性的指向を隠したいため)警察に届けられないと思った』と供述」した事件を取り上げている。

これからも分かるように、悪質、卑劣な差別も多い。周囲の差別意識によって大変な苦痛を感じている人びとが存在している。この意味でも、ヘイトが許されないことを、もっと強く押し出す必要があるのだ。


3 自民党は、なぜ「差別禁止」に抵抗するのか

痴漢を禁止する法律に反対する人がいるとしたら誰でしょう? 答えは「痴漢」ですね。では、LGBTに対する差別を禁止することに反対する人々は誰でしょう。 答えは「自民党」です。。

自民党の議員からは、今回の法案に関する議論の中で、LGBTに対する差別発言が相次いでいる(※)。また、これまでも、竹下亘総務会長(宮中晩餐会発言)、杉田水脈議員(新潮45差別文書寄稿)、谷川とむ議員(趣味みたいなもの発言)、白石正輝足立区議会議員(足立区が滅びる暴言)、平沢勝栄議員(国がつぶれる発言)など枚挙にいとまがない。

※ 例えば、2021年5月21日付共同通信「LGBTは種の保存に背くと自民議員が発言」によると、「自民党の簗和生衆院議員が20日の党会合で、LGBTを巡り「生物学上、種の保存に背く。生物学の根幹にあらがう」といった趣旨の発言をした」とされる。その他にも「道徳的にLGBTは認められない」「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」などの発言があった。極めて悪質な差別発言といえる。

自民党がLGBTへの差別規定に反対するのは、自民党が、LGBTに対する差別を温存したがっているとしか思えない。日テレNEWS24によると、「『許されない』と明記されることで、権利を主張する人が出て、裁判をあちこちで起こす」という発言があったとされる。

※ 日テレNEWS24(2021年5月21日)「LGBT法案「種の保存に背く」自民慎重論」による。

ここで訴えられるのは誰なのかを考えてみると分かりやすい。要するに、LGBTに対する差別を「率先して」行ってきた人びと、すなわち自民党である。政治家でLGBT差別をしてきたものは、ほぼ例外なく自民党なのだ。差別禁止をするなというのは、自民党が訴えられることなく、LGBTに対する差別をしたいという意思表示であろう。


4 署名のお願い

最後に署名「自民党『LGBTは種の保存に背く』『道徳的にLGBTは認められない』発言の撤回と謝罪を求めます」の署名を呼びかけます。


安倍前総理が反対の策動か【6月13日:追記】

6月13日にAERA.dotがある自民党議員の声として報じたところによると「ある総理経験者が『これは闘争だ』と言って、(議連がまとめた修正案を)絶対に通すなと総務会役員に直接、攻勢をかけたというのです。その人物は、選択的夫婦別姓や慰安婦問題の急先鋒。拍車をかけたのが同法案の自民党の取りまとめ役が、その人物と縁が深い、稲田朋美衆議院議員だったからです」という。さらに複数の関係者が、その人物とは安倍晋三前首相だと証言しているという(※)

※ AERA.dot2021年6月13日「敵は『自民党内』にあり 『LGBT法案見送り』でわかった菅首相の政敵は野党だけではなかった」による。

事実とすれば、とんでもないことである。菅総理は事実上安倍総理の傀儡かいらいにならざるを得ないということだろう。また、実質的に政権で力を持っているのが、極右の安倍晋三氏だということになる。これでは、日本国民の権利は守られない。