爆撃を支持する中山副大臣


イスラエルはガザの市民に対し無差別のミサイル攻撃を行いました。これによってガザ地区では女性や子供を含む多くの市民が、傷つき殺害されています。

これに対して日本の中山泰秀防衛副大臣が支持するツイートをして、内外からの批判を浴びています。このような無差別殺人を擁護するツイートは許されないばかりか、我が国の国益をも損なうものです。

無差別殺人を擁護する中山氏の問題点を論じます。

【閲覧注意】子供たちの傷ついた画像が使用されています。




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1 菅内閣の中山泰秀防衛副大臣のデマツイート

執筆日時:

一部追記:

筆者:平児

菅内閣の中山泰秀防衛副大臣がとんでもないツイートをしている。

中山泰秀防衛副大臣のTwitter

※ クリックすると拡大します

まず「ある日突然24時間で300発以上のロケット弾がテロリストによって打ち込まれ」などと書いているが、これはとんでもないデマである。

現在、イスラエルがある国土はパレスチナ人の土地であり、イスラエルによって土地を奪われ、ガザと西岸に押し込められて、外部との交通も立たれてきたのはパレスチナの側なのである。

パレスチナの側こそが、残忍なイスラエルによって侵略・抑圧され、愛する家族の命を奪われ続け、家を奪われ、生活の手段を奪われ、医療を受ける機会さえ奪われてきたのである。

イスラエルによるパレスチナへのジェノサイド的な大量虐殺が先であり、住居を奪われたことが契機となっているのであって、「突然」ミサイルが撃ち込まれたわけではない。

※ 中山副大臣の人物像については、日刊ゲンダイ「中山議員 お持ち帰りホステス在籍店に政治資金から18万円」、しんぶん赤旗「暴力団関連企業から献金」、デイリー新潮「自民「中山泰秀」副幹事長、懇親会でセクハラ行為…」などと記事にされたことを指摘しておく。


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2 パレスチナは国土を奪われ、虐げられ続けてきた。

イスラエルは、その侵略性からパレスチナの国土を奪い続けてきた。中山副大臣は、まさに加害者と被害者をすりかえてデマツイートを行っているのだ。

パレスチナ子供のキャンペーンの「パレスチナ問題とは」に、イスラエルとパレスチナの年代ごとの関係を示した地図が掲載されている。これによればイスラエルの侵略性は一目瞭然である。住む家を奪われ続けてきたのはパレスチナの側なのだ。

しかも、ガザは封鎖されてイスラエルの許可がないと西岸やその他の地域へ移動ができず、意図的に医療施設も制限されている。さらには、西岸でも土地を奪われて、イスラエル人の植民が続いているのである。

そのような中、耐えきれなくなったハマスがイスラエルをミサイル攻撃をすると、イスラエルはこれを悠々と迎撃し、それを理由にガザの市民に無差別の攻撃をしてきた。この子供は、数多い被害者の一人だ。

また、イスラエル兵士による日常的な殺人、暴行も行われている。車椅子のパレスチナ人もおかまいなしなのだ。

女性に対しても暴行の限りが尽くされている。

彼らはテロリストではない。ごく普通のパレスチナ人である。暴行に理由などない。日常的に、イスラエルによる殺人、暴行が行われているのだ。銃を突きつけられているこの子供がテロリストだとでもいうのだろうか。


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3 イスラエルは、パレスチナに対してホロコーストを行っている。

イスラエルのパレスチナに対する侵略と抑圧の中で、ハマスによる抵抗のための小規模で限定的なミサイル攻撃が行われたことを口実にして、イスラエルはパレスチナの民を無差別に殺害している。

現実から目をそらさないで欲しい。これは、現在のガザでイスラエルによって行われていることなのだ。

この子供たちの被害のツイートはごく一部にすぎない。#SaveGaza、#savepalestinians、#GazaUnderAttack などのハッシュタグでSNSを調べて欲しい。イスラエルによる民族浄化の現実が数多く報告されている。

この子供たちにどんな罪があるというのか。罪は、イスラエルの侵略行為であり、一方的な虐殺にある。


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4 中山副大臣はデマを繰り返す

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(1)中山副大臣のツイートは個人の発言ではない

中山副大臣は、イスラエルによるジェノサイド、ホロコーストに対して「私達の心はイスラエルと共にあります」とツイートすることにより、支持の立場を明らかにした。「イスラエルにはテロリストから自国を守る権利があります」として、子供や女性を殺害する行為を「権利」だとしたのである

中山副大臣は、後に「個人的見解」だと釈明したが、このような釈明が通用するものではない。中山副大臣のアカウントには「State Minister Of Defense 防衛副大臣 MP 衆議院議員 元外務副大臣 外交•国防各部会長」と明記されている。ツイートには個人的見解とは書かれていない。

彼は、日本の政府高官、防衛省の指導的立場にある人物の見解として、イスラエルによる子供や女性を中心とした非戦闘員の殺害を「権利である」とし、「心は共にある」と宣言したのである。このため、国際的にも公的な発言として理解されている。


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(2)中山副大臣のホームページでのデマ

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ア 事前警告してピンポイント攻撃しているという嘘

また、彼は、ホームページの記事で、「イスラエルは、テロリストのいるビルに対して、『今からここを、テロリストがいることを確認しているから、ここを砲撃する』ことを、IDFはですね、はっきりと予告をして、そこに向かってピンポイントで爆撃をしている」と言ってるが、これまたデマである。

このツイートにも「without warning its residents in advance.」(事前の警告なく)と書かれているが、警告をしてピンポイントで攻撃しているなら、なぜ子供や女性が多数殺されている(※)のか、デマもいい加減にしろと言いたい。

※ TBS NEWS 2021年5月15日「イスラエル軍攻撃続く パレスチナ側の死者さらに拡大」によると、「15日未明にはわずか40分の間に400発以上の爆弾などが投下され、パレスチナ側ではこれまでに子供31人を含む126人が死亡」とされている。まさに無差別絨毯爆撃である。

さらに、このツイートには「which house more than a dozen international and local media outlets」(これらのオフィスビルには、12を超える国際及び国内の報道機関がある)と書かれている。ハマスではなく報道機関が爆撃されているのだ。

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イ 中山副大臣による論理のすり替え

また、中山副大臣は「私のツイッターに反応している中には、『パレスチナはテロリストじゃないぞ』という批判も入っております。私は、パレスチナの方々がテロリストだと書いたことは1回もありません。私が申し上げたいのは、そういう混同をするようなことをやめていただきたいと」と言っている。

冗談ではない。中山氏が、テロリストでもない子供や女性を殺害することをイスラエルの「権利」だと言っていることを批判しているのだ。混同などしていない。これこそ完全なすり替えだ。


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5 中山氏の行為は、国益をも損なう

安倍前総理は、トランペットと揶揄されることがあるほど親米の総理であったが、実は、中東政策だけは米国に盲従することはなかったのである。

米国が大使館をエルサレムに移設したときも、日本大使館をテルアビブから移転させることはなかった。これは、アラブ諸国に日本企業が数多く展開しているため、極端に親イスラエルの旗色を鮮明にすることができなかったのである。

今回のイスラエルのガザへの攻撃についても、ハマスとイスラエルの双方に自重を促すというのが政府の立場である。イスラエル支持を鮮明にしている米国(※)とは一線を画していた。

※ わが国の対応は「最近のイスラエル・パレスチナ情勢について(外務報道官談話)」において「日本政府は、すべての関係者に対し、一方的行為を最大限自制し、事態の更なるエスカレートを回避し、平穏を取り戻すよう強く求めます」としていることを参照。また、米国の対応は、時事通信2021年5月13日「米、外交努力を加速 パレスチナ情勢沈静化へ」など参照

ところが、中山副大臣は副大臣という立場にありながら、イスラエルのガザへの軍事攻撃を無条件に支持しているのであるから、政府の立場とも異なるばかりか、日本企業の中東地域での事業活動に支障をきたす恐れのある行為であり、国益をも害しているのである。

さらには、日本企業や日本人が、イスラムステートなどのテロ組織の攻撃の対象になるリスクを増やしたとも言え、中山副大臣はわが国の企業や国民の生命・財産を危険に陥らせているのだ。愚かというより他はない。


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6 平児の心はパレスチナと共にある

中村副大臣は、ハマスの攻撃をテロリズムと呼んでいるが、そもそもガザでイスラエルによって殺害されている子供たちはハマスとは無関係である。あくまでもハマスによる攻撃を口実にしたホロコーストの犠牲になっているのだ。

そもそもテロリズムと民族解放の戦いの区別などできるものではない。旧日本軍が支配していた中国の八路軍や、ナチが支配していた東欧諸国でのパルチザン部隊の戦いも、当時の日本政府やナチに言わせればテロリズムだっただろう。

イスラエルこそ、世界最大のテロ国家である。彼らが殺害した非戦闘員の数はどれほどになるだろうか。

平児はハマスを支持してはいないけれど、テロ組織だとは思っていない。彼らは民族解放闘争として支配者であるイスラエルに対して反撃・抵抗を行っているが、他国の民間人に対してテロ行為を行ったことは一度もない。

また、パレスチナの開放も絶対に必要だと思っている。そもそも第二次大戦まで、パレスチナでは、パレスチナ人とユダヤ人が多少の対立はあったにせよ仲良く住んでいたのである。そこからパレスチナ人を追い出してイスラエルを建国したシオニストがすべての原因なのだ。彼らは、一説によると大戦末期にはナチとも手を組んでいたという説がある(※)

※ 広河隆一「ユダヤ人〈1〉ユダヤ人とは何か」(1985年)、 Lenni Brenner「Zionism in the Age of the Dictators」(2014年)、レニ・ブレンナー「ファシズム時代のシオニズム」(2001年)など参照

日本の報道は死者の数しか報道しない。でも、それはたんなる数ではない。その一つ一つに悲しみと苦しみがある。【CNNニュース】The young victims of the Israeli-Palestinian conflictを視て欲しい。

政府の方針にさえ反して、ガザでの子供と女性の殺害をイスラエルの「権利」と言ってのけ、「心はイスラエルと共にある」と支持する中山副大臣と、それを副大臣のポストに留めておく菅総理には強く抗議する。

医療スタッフに対して手りゅう弾を投げるイスラエル兵。