ミャンマー軍による弾圧


ミャンマー軍による市民への暴行は世界的な批判を読んでいます。最近では、市民の側の自制もありややおさまっているようですが、さらに陰湿化しているという情報もあります。

これに対し日本政府の消極的姿勢が目立っています。

ミャンマーを忘れてはいないと発信することが大切だと思います。




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1 ミャンマーからの声

執筆日時:

最終修正:

筆者:平児

2月1日にミャンマーで軍事クーデターが発生すると、EUなど各国はこれを強く批判した。軍の動きは国民民主連盟(NLD)政権が軍の権力を削ごうとしたことに反発したものである(※)

※ NLDもロヒンギャに対する抑圧を進めるなど民主的な政権とは言い難かったが、2015年の総選挙で圧勝して政権についており、国民の支持を得ていた。

ミャンマー国内で軍事政権に対するデモが拡がると、これに対する軍の弾圧が激化していった。2月19日に、軍の銃撃による最初の死者(※)が出て以来、軍の暴行は激化の一途をたどっている。

※ ロイターが報じた医師の証言によると、亡くなった女性は実弾で頭部を撃たれた可能性があるという。

次の動画は、在日ミャンマー人によるミャンマー情勢をまとめたものだ。なお、この動画の後も死者数は増え続け、3月28日には1日の死者の数が114名になったという。

また、ミャンマー国内からのSNSによる動画発信も数多い。以下は、そのうちのごく一部である。

3月23日には自宅にいた少女が射殺されている。28日には生きたまま焼き殺された男性がいるとの証言も報道された。ミャンマー軍の行動は歯止めがかかっていないようだ。

このような中、驚くべきことに軍幹部がパーティを開いているとの映像が拡散されている。ミャンマー軍幹部の異常さが浮き彫りになっている映像だ。


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2 軍の残虐な行動を止めるには国際的な批判が必要

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(1)軍の残虐行為は自身のなさの表れ​​​​

なぜ、ここまで軍は暴力を激化させたのだろうか。一般論としては、軍が同じ国民に対して暴力を用いるのは、①異なる民族間の憎悪、②仲間が殺害されたことの恨み、③軍中央による教育などが原因のことが多い。今回のミャンマーの軍の暴行は、同一民族間のことであり①ではない。また、デモ隊が暴力を用いたという情報はないので、②でもない(※)

※ カイン州で少数民族の武装勢力が軍の幹部らを殺害したと表明したとの報道があるが、未確認情報であり、軍の暴行とは無関係である。

おそらく、予想を超えるデモ隊の抗議活動に恐れをなした軍が、軍事支配を確立するために、軍中央が軍に対する行動を煽ったのであろう。であれば、これを止めさせるためには、それが軍事政権にとって利益にならないということを分からせる必要がある。国際的な批判と圧力を高めるべきなのだ。


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(2)日本政府の人権問題に対する感覚の低さ​​​​

にもかかわらず、相変わらずではあるが、国際的な人権問題に関する日本政府の感覚は低調(※1)である。そればかりか、軍政権を承認するかのごとき動きさえある。在ミャンマーの日本大使館も3月29日現在、2月21日にごく簡単な批判声明を載せただけである(※3)

※1 日本経済新聞2021年2月1日記事「菅政権、ミャンマー国軍クーデターの発信遅れ」など。

※2 朝日新聞2021年3月10日記事「対ミャンマーODA ひそかに見送った日本」によると、「加藤勝信官房長官は同日の会見で『現時点で早急に判断すべき案件はないと聞いている』と述べ、対ミャンマーODAの見送りを明らかにしなかった」とされる。

※3 在ミャンマー日本大使館WEBサイト「ミャンマーにおけるデモ隊等の死傷について(外務報道官談話)」は2度に渡って修正され、3月28日には「ミャンマー国軍・警察による市民に対する実力行使により、3月27日にはこれまでで最多の死者を数えるなど、ミャンマーで多数の死傷者が発生し続けている状況を強く非難します」などとされている。

各国政府首脳がミャンマー軍の人権侵害を個人的に批判している中で、自民党政権幹部の意識の低調さが目立つのである。このような日本政府の国際感覚・人権感覚はあきれるというより他はない。我々は、日本政府に対しても圧力をかける必要がありそうだ。


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3 私たちにできることを

ミャンマーの人権侵害に対し、私たちにできることは、声を上げることだと思う。ネットでの発信、日本政府への圧力など、人権侵害に対する行動をとってゆくべき時だ。